実務で「流通」を学ぶ

実務で「流通」を学ぶ
仕事で培った経験は、初めて取り組む時には苦労が伴うものですが、後になって思いがけない形で役立つことがありますよね。私自身、もともとは空間プロデュースの仕事を目指し、感性やデザインセンスを磨くことに力を入れてきました。そんな中、ご縁があって就職した3つ目の職場で得た実務経験が、現在の仕事に繋がる貴重な学びとなりました。

 

家具・インテリアの小売・卸売を手掛ける株式会社モニモスに入社し、それまでとは異なる多くの経験をさせていただきました。

主な業務は、親会社が展開する3つのブランドの直営店や、取引先のインテリアショップへソファやラグ、家具などを卸すこと、直営店でのディスプレイ指導などです。

このディスプレイ業務では、前職のラダックフラワースタジオでの経験  コラム「花の世界」から、インテリア&雑貨へが大いに役立ちました。


ラダックでは、店舗空間そのものを大切にし、モダンデザインやデザイナーズ家具はもちろん、什器や細かな備品、さらには空間にふさわしい高品質な音響に至るまで、すべてをインテリアの一部として捉えていました。

入社当時は知らないブランドやデザイナーも多くありましたが、一通り勉強し知識を深めました。こうした環境で日々の業務に取り組むうちに、自然と自身の感度も上がり、インテリアに対する意識が一層高まったと感じています。

 

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モニモスでは、宮城県の新規店舗立ち上げにも携わりました。そこでは、雑貨の商品構成(MD)に関するアドバイスやディスプレイ指導を行ったほか、プリザーブドフラワーや自然素材の造花を使ったオリジナルアレンジメントを制作・商品化し、他店との差別化を図りました。

さらに、グリーンを用いたパーティション兼家具のような商品の開発を手掛け、ビジネス展示会で発表させていただく機会も得るなど、前職で培った知識やスキルを存分に活かすことができました。

 

実務で「流通」を学ぶ


 

こうした店舗運営や商品開発といった「外に出る仕事」では、これまでの経験を活かせましたが、もう一つの重要な柱であった卸売業特有の業務には、当初かなり苦労しました。

日々の取引を円滑に進めるための納品伝票や請求書の正確な発行・管理、そしてそれらに基づく経理業務は、売掛金の管理上、非常に重要なプロセスです。

卸業務や経理業務は全くの未経験でした。
前職でも雑貨販売はしていましたが、あくまで「小売店」として商品を仕入れる立場。一方、モニモスは「卸売業」であり、基本的には在庫を持たず、注文を受けてから書類(伝票)のやり取りで商品を動かします。仕入れの「掛け率」なども小売とは異なります。

 

この「流通」の仕組みを、机上の空論ではなく実体験を通して学べたことは、後に私の大きな強みとなり、いま現在、展示会の出展サポートを行う上で、この経験が非常に役立っています。

展示会にはメーカー、小売業者、問屋など、様々な立場の方が来場されます。私は、ブースに立ち寄ってくださった方に掛け率や取引条件などを伺うことで、その方がどのような流通経路でビジネスをされているのか、大筋を把握することができます。

しかし、例えばイベント運営には慣れていても、展示会への出展経験が少ない方の中には、バイヤーとの適切な交渉方法や、業界の商習慣を踏まえたセールストークが苦手な方もいらっしゃいます。

  

 

 

実務で「流通」を学ぶ


 

ビジネスにおいて信頼は何よりも大切です。業界内で信用を得て活動していくためには、商売に必要な最低限の知識が欠かせません。基本的なことを理解していないと、バイヤーに見透かされたり、取引相手として不適格だと判断されることがあるからです。

現在、私が展示会出展者の伴走支援を行う際には、そうした事態を避けられるよう、具体的なセールストークについてもアドバイスさせていただいています。


もう一つの未経験であった経理業務についても、多くのことを学びました。

親会社と連携しながら法人向けの大手会計ソフトの使い方を習得し、財務諸表の作成・管理、資金繰りや業績の把握といった業務を担当。月末には締め作業を行い、税理士さんに内容を確認していただく、という流れでした。

経理の仕事は細かく手がかかるものでしたが、この時に複雑な卸業務や経理業務を経験できたことで、事務スキルが格段に向上したと感じています。

そのおかげで、数年後に自身で起業した際も、経理業務への抵抗感や煩わしさを感じることなく、スムーズに対応できています。


そして、ここでの経験が、いま展示会出展者の伴走支援という仕事に活きているのですから、人生、何事も経験。無駄な経験などないということですね。

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