買い歩き

May 4, 2019

食べ歩きも多くある。

 

 

 

「食べ歩き」は、本来、上記の辞書にあるような意味で、例えば「京都を食べ歩きする」などのように使われるのが一般的です。旅行雑誌やテレビの旅番組でも、「食べ歩きの旅」などがたびたび特集されますし、観光地でよく見かける、いわゆる「食べ歩きマップ」(おすすめの飲食店を地図にしたもの)は、観光客になるべく多くの店に立ち寄って地元の味を楽しんでもらうためのアイデアとして定着しています。こうした使い方の「食べ歩き」は、一般的には「あちこちの店で食べて歩くこと」だと考えてよいでしょう。

 

もともと「食べ歩き」は、複合動詞「食べ歩く」が名詞になったものです。「食べ歩く」は、「食べる+歩く」と捉えることができますが、日本語では、「右側に来るほう(下線部)が主要部である」という原則があります。つまり、この場合は、「歩く」が主要部となり、焦点が「歩くこと」に当てられているため、意味は「あちこちの店で食べて歩きまわること」になるのです。例えば、最近よく問題視される、「歩きながらスマホをすること」は、「スマホをする」ことに焦点が当たっているので「歩きスマホ」になることからも分かるでしょう(「スマホ歩き」とすると、「スマホのように歩くこと」という意味になってしまいます)。

 

しかし、最近、街中やイベント会場などで、手軽にテイクアウトして歩きながら食べられるスナック類やお菓子が注目され、ネット上でも、以下のような使い方をよく目にするようになりました。

例1)「原宿でカジュアルにパフェの食べ歩きを!」(2018年8月3日『gooニュース』より)
例2)「温泉街の食べ歩きに新提案!新名物はハンバーガー!」(同上)
例3)「食べ歩きスナック&スウィーツ 小腹がすいたら、ぜひどうぞ♪
   食べ歩けるスナック&スウィーツ」(大型テーマパーク 公式サイトより)
こうした例は、「歩きながら食べる」という意味で使われており、焦点が「食べる」ことにあると考えれば、「歩き食べ」とでもすべきところでしょう。

 

上記の辞典を調べると、本来の「食べ歩き」(もしくは「食べ歩く」)ということばについては、戦前・戦中から使われていた用例が載っています。NHKのアクセント辞典には、1985年発行版に初めて立項され、その後、旅やグルメの特集記事や番組を通して、すっかりおなじみのことばとなりました。そして現在、昔は行儀が悪いと敬遠された「歩きながら食べること」が1つのスタイルとして流行するのに合わせて、耳慣れている「食べ歩き」に新しい意味を持たせて使うようになったということでしょうか。

 

先日開かれた新聞用語懇談会放送分科会(*)(2018年6月)でも、「食べ歩き」の新しい使い方が議題にのぼり意見交換が行われました。複数の放送局が場面によっては使うこともあると回答しました。「食べ歩きパフェ」「食べ歩き専用カップ」などの新しいトレンドを紹介する場面では、キーワードとして使わざるを得ない状況もあるようです。映像と組み合わせて伝える分には、問題はさほど生じないのかもしれませんが、観光地によっては、従来の「食べ歩き」は奨励しつつも、「混雑」を理由に「歩きながら食べること」(つまり「歩き食べ」)は禁止しているところもあります。「食べ歩き」を本来の意味の「飲食店を回ること」と認識している人が聞いたときに誤解や違和感がないように、やむを得ず使うときは、言いかえや言い添えを工夫することが求められるでしょう。

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